塗料在庫の「見える化」で利益アップ!DX入門!

【今月もまた塗料を余らせてしまった…】

「急ぎの案件なのに、必要な色がない」「倉庫のどこに何があるのか分からない」
こんな悩みを抱えている塗装業の経営者様は少なくありません。実際、塗装業界の在庫管理は他の工業製品を扱う業種と比べて格段に複雑です。なぜなら、扱う塗料商品の種類が膨大で、色の微妙な違いや希釈率、有効期限など、管理すべき項目が多岐にわたるからです。
従業員15名程度の中小塗装会社では、多くの場合、経営者自身が在庫管理を兼務しています。朝は現場の段取り、昼は見積もり作成、夕方は材料発注と、一日中走り回っている中で、正確な在庫管理まで手が回らないのが現実です。
手書き・Excel管理の限界点
「まだExcelで十分」「手書きの方が確実」そう思っている経営者も多いでしょう。しかし、事業が成長するにつれて、アナログ管理の限界が見えてきます。


【よくある失敗パターン】

・同じ塗料を重複発注してしまう
・有効期限切れの塗料を使ってしまい、塗り直しが発生
・在庫があるのに「ない」と思い込んで新規購入
・顧客の色変更要求に対応できず、機会損失
・廃棄処理が必要な塗料の数が増加し、費用が膨らむ

ある塗装会社の経営者は「月末の在庫確認だけで丸一日かかる。その間、現場に出られないのが痛い」と話します。従業員が在庫を検索する時間も含めると、月に10時間以上を在庫関連の業務に費やしているケースも珍しくありません。


【資金繰りを圧迫する「念のため在庫」】


中小塗装業の経営者が最も頭を悩ませるのが、在庫と資金繰りのバランスです。「顧客に迷惑をかけたくない」という気持ちから、つい多めに在庫を保管してしまいがちです。
しかし、塗料は決して安い買い物ではありません。年間売上1億5000万円の会社なら、およそ2000万円が材料費。このうち、過剰在庫分が10%あるだけで、200万円の資金が眠っていることになります。
「急な受注に対応したい気持ちは分かるが、過剰在庫は会社の首を絞める」と、経営コンサルタントも警鐘を鳴らします。今すぐ始められる改善策!!

【有効期限管理の徹底】


塗料の廃棄ロスを防ぐため、有効期限の管理を徹底しましょう。塗料の有効期限は1年です。期限が近い塗料から使う「先入先出し」の徹底、期限3ヶ月前には使い切るよう計画的に使用するなど、簡単なルールから始めることをお勧めします。このミス防止により、材料費の削減にも繋がります。


【デジタル化への第一歩】


「ITは苦手だから…」と敬遠する経営者も多いですが、現在は塗装業界向けの簡単な在庫管理アプリも登場しています。メーカー各社が提供するサービスの中には、スマホで塗料にQRコードを付けて読み取るだけで在庫管理できるツールがあります。月額18,000円から利用可能です。塗料の残量kgに対してあと何㎡塗れるかが分かります。
導入時には気軽に問合せできるサポート体制も重要です。多くのサービス運営会社では、無料相談や導入支援を行っており、ITに詳しくない経営者でも安心して始められます。クラウド型のシステムなら、現場からでもリアルタイムで在庫情報を確認できます。


【従業員のモチベーション向上にも効果的】


在庫管理の改善は、従業員のモチベーション向上にも大きく貢献します。「必要な材料がすぐに見つからない」「在庫を探すために作業が中断される」といったストレスは、現場の士気を下げる大きな要因です。
適切な在庫管理システムが導入されると、従業員は本来の塗装作業に集中できるようになります。「今日は材料探しで時間を無駄にしなかった」「必要な塗料がすぐに見つかった」という小さな積み重ねが、現場全体の雰囲気を改善し、品質向上にもつながります。
また、若い人にとって、QRコードでの在庫管理は馴染みやすく、新人教育の負担軽減にも効果的です。ベテラン職人の経験に頼っていた在庫の場所や使用量の判断を、システムで可視化できるため、技術の伝承もスムーズになります。


【顧客との信頼関係強化】


在庫管理の改善は、顧客との信頼関係強化にも直結します。「必要な塗料が足りなくて工期が遅れた」「色の調合を間違えて塗り直しになった」といったトラブルは、顧客の信頼を大きく損ないます。
適切な在庫管理により、工期の遅延リスクを大幅に減らすことができます。また、塗料の残量が正確に把握できることで、追加発注のタイミングも最適化され、「今回の工事、最後まで同じ色で仕上がるか心配」といった顧客の不安も解決できます。
さらに、在庫データを活用することで、過去の施工データから最適な塗料使用量を算出し、より精度の高い見積もりが可能になります。これにより、追加料金の発生を防ぎ、顧客満足度の向上につながります。


【成功事例:ある塗装会社の変化】


実際に在庫管理システムを導入したある塗装会社(従業員12名)の導入事例を紹介します。導入前は、月末の在庫確認に経営者が丸1日を費やし、在庫確認時間がかかりすぎることに悩んでいました。
システム導入後、在庫確認時間はCSVで確認するためほぼ0に短縮され、過剰在庫は約30%削減されました。削減された資金で新しい機材を購入でき、受注拡大にもつながりました。「今では在庫管理が楽しみになった」と経営者は話します。
従業員からも「材料を探す時間が減って、作業に集中できるようになった」「お客様に工期を守れるようになって、やりがいを感じる」といった声が上がっています。導入から6ヶ月が経った時点で、廃棄する塗料の数も大幅に減少し、環境面でもメリットを実感しているそうで、経済産業省のDX認定にも取り組んでいく予定です。
経済産業省.DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度).経済産業省.2025-05-25.https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html(引用2025-06-20)

【よくあるQ&A】

Q1: 塗料の有効期限、本当に1年しかないの? 缶を開けてなければ大丈夫じゃないの?

A1: はい、塗料の一般的な有効期限は塗料缶の開封後1年とされています。これは、塗料の成分が時間と共に劣化したり、分離したりする可能性があるためです。保管環境(温度、湿度など)によっては劣化が進むことがあります。使用期限切れの塗料を使用すると、色ムラ、密着不良、耐久性の低下など、施工品質に悪影響が出るリスクが高まります。お客様への信頼を損ねないためにも、使用期限の管理と「先入先出し」の徹底が非常に重要です。

Q2: 月額18,000円は中小企業にとって安くない。本当に費用対効果はありますか?

A2: ご指摘の通り、月額費用は気になる点だと思います。しかし、記事内にもあるように、過剰在庫による「眠った資金」や、無駄な発注・廃棄によるコスト、さらには在庫探しにかかる人件費や機会損失を考えると、18,000円はむしろ投資と捉えられます。例えば、年間200万円の過剰在庫が10%削減できただけで20万円、さらに廃棄ロスや業務効率化による人件費削減を合わせれば、月額費用をはるかに上回るメリットが期待できます。多くのシステムでは無料トライアルや相談会がありますので、まずは自社の状況に合わせたシミュレーションをしてみることをお勧めします。

Q3: QRコードでの在庫管理は便利そうだけど、うちの高齢のベテラン職人でも使えるでしょうか?

A3: ご安心ください。最近の在庫管理アプリは、ITに不慣れな方でも直感的に使えるよう設計されています。QRコードの読み取りはスマートフォンのカメラで行うため、普段からスマホを使っている方であればすぐに慣れることができます。導入時にはシステム提供会社による丁寧なサポートや、社内での簡単な説明会を実施することで、ベテラン職人の方々もスムーズに導入できるケースがほとんどです。「新しいものに触れるのが楽しい」と感じる方も多く、作業効率が上がることでかえってモチベーション向上に繋がることもあります。


【まとめ】


大切なのは、完璧を求めすぎないこと。まずは現状の問題点を整理し、できることから一つずつ改善していく流れが重要です。在庫管理の機能向上は、経営者の時間を生み出し、より重要な経営判断に集中できる環境を実現します。
他社との差別化を図るためにも、「在庫管理なんて」と思わず、事業成長のための重要な投資として捉えてみてください。適切な在庫管理は、資金繰りの改善、顧客満足度の向上、従業員のモチベーション向上、そして経営者の働き方改革にも直結する、まさに一石四鳥の取り組みなのです。在庫管理システムの導入を検討されている経営者様は、まずは無料相談から始めてみることをお勧めします。

この記事を書いたスタッフ

福本 満壽男
代表取締役
福本 満壽男(ふくもと ますお)
株式会社フクモト工業の代表取締役、福本満壽男です。高校卒業後から塗装一筋、創業66年の伝統を受け継ぐ2代目として、「塗装で守る快適住宅」を目指し、日々現場と向き合っています。
外壁・屋根塗装を中心に、リフォームやエコキュート工事、塗装業向け在庫管理アプリ「らくらく塗装屋さん」の開発・普及にも取り組んでいます。
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